小児在宅医療が直面している課題

2011年のWHOの統計によると、日本の新生児死亡率は0.001%で、世界一少ないとされている。
医療が発達したことで、新生児死亡率が格段に減少した結果だろう。
しかし、医療技術の進歩により、これまで助けられなかった未熟児が救えるようになったことで日常的に医療的ケアが必要な子供の数が増加したのだ。
未熟児の出産増加により、NICU(新生児集中治療室)が満床状態となり、重症妊婦の受け入れ拒否が問題となっている。
また、およそ2万人以上の子供が自宅での医療的ケアを必要としているのが実状だ。
NIUCで新たな患者を受け入れるためには、慢性疾患や障害を持った子供の早期退院が望まれるようになった。
その目的を達成するために政府が積極的に取り組んでいるのが、小児在宅医療である。
これまで重症な障害を持つ子供は、介護保険制度の対象ではなく、社会福祉制度の対象とされていなかった。
また、ケアマネージャーのような専門職が存在しないため、地域の連携が円滑に進んでいないという課題もある。
しかし、慢性疾患や障害を持った子供を、自宅や住み慣れた地域で暮らしていけるようにしたいという、家族や患者のニーズによって、小児在宅医療への関心が高まっているのだ。
小児在宅医療において、患者や家族の支援にあたる訪問看護師の存在は大きいと言えるだろう。
とはいえ、小児在宅医療を担う医療機関や医師、訪問看護師が不足している点が大きな課題とされている。
人手不足を補うためには、医療の現場だけではなく、訪問リハビリテーションやホームヘルプなどの福祉、教育や行政との多種連携を行っていくことが重要だ。